日本初、顧客のPMFを行う会社

COLUMN どうすればアイデアや企画が通るのか?その秘訣を聞いてみました

新規事業立ち上げ支援 2023.01.30

PMFコンサルティング取締役であり、ビズデブ(Business Development)の第一線にいる南風盛一郎にインタビューしてノウハウを学ぶこの企画。

今回は、どうすればアイデアや企画が通るのか?について、自身の体験事例なども踏まえ話を聞いていきたいと思います。

ズバリ、企画やアイデアを通す秘訣は何ですか?

PMFさせるために必要な様々な様子が絡み合う

企画書が通るという観点で言うと、顧客の文脈と歴史、顧客内のアセットに沿ったものであることをアピールすることが大事です。どれだけ内容が良くても、相手の承認を得やすい要素が盛り込まれていないと、企画書は通りにくいでしょう。

既に信頼関係性のある相手であれば、閃いたアイデアを提案してすぐに「やりましょう!」となることもありますが、例えば今対応している大手企業系の案件の場合、クリエイティブのアイデアも相手が納得できるエビデンスとロジックがないと通りません。

「Aという施策をやりましょう!」と言っても、相手には安心して賛同できる材料がないので二つ返事で「やりましょう!」とならないんです。

事業を進める上でアイデアは必須となりますが、そのアイデアをロジックとエビデンス、既成事実、既成行動による裏付けで納得性を持たせて通す技術がより大事になります。

良いアイデア=通るアイデア、では必ずしもないんですね。

アイデアを活かすためのエビデンスやロジック構築があって初めて提案を通すことができます。

『刺せる』と『通せる』は全く別物のスキルです。

【事例1:某大手不動産会社のクリエイティブ変更】

とある大手不動産会社の例でお話しします。

プロダクトの元の訴求内容が、その社名とプロダクト自体にフォーカスされたものでした(〇〇不動産の〇〇!といった具合)。

早速テコ入れをしていきます。

基本的な成功パターンとして”モノではなくコトを売る”というものがあります。

本件でもモノ訴求に偏りすぎていたんですね。だからまずはコト訴求で状況が大きく変わるかを試してみました。

他の事例でも言えますが、ツールを売るのではなく、そのツールを使うことで得られる価値を売りにしないといけません。新規事業に限らずですが、大抵の場合、モノからコトの意識にならないとそもそもダメです。

例えば、ディズニーランドに行くのはメリーゴーランドやジェットコースターに乗るためではなく、ディズニーの世界観に触れて夢の世界の住人になるためですよね。

本件でも、モノを通して、どのようなことが得られるのかを丁寧に考えていきます。

結論、私が考案した訴求は、大きくヒットする訴求となり、現在でも使われている訴求となっています。

どのようにアイデアを通したのか

新規事業アイデアをブレイクスルーさせる考え方

さて、本題ですが、モノ訴求→コト訴求の大きな転換においては顧客に承認を頂くことが大きな障壁となります。

私の場合、大抵のアイデアはもう降ってきているので、いかに周りを納得させるか考え、そして組織内の承認を得るために、相応のパワーを割きます。

この時まず私がやったのは、顧客内でのユーザーアンケートやインタビューの確認です。営業の方ともミーティングをセットさせていただき、商談を通して得た数多くのお客様の声、不便、課題意識などの現場のリアルを収集していきました。

商談は貴重な情報の宝庫です。例えば、契約の決め手となった要因や、認知のきっかけ、検索した理由、比較した競合とその理由、などなど。

この大手不動産会社のケースではたまたま社内にアンケート資料が整っていたので、その中からも顧客の声を知ることができました。

そして実際に、顧客はオフィスや設備などのハード面よりもブランド価値に魅力を感じて買っていることが分かりました。

この点を踏まえて既存のクリエイティブを見ると、打ち出されている内容が「駅近の立地」「ファシリティの充実」のような現実的なモノであり、「顧客のニーズに刺さっていないのではないか?」という仮説が立ちました。

既に降っていたアイデアの答え合わせができ、「これはすんなり通せそうだな」という感想です。

直感をロジックとエビデンスで説明できる。

このような順序で答え合わせができた事案は、大抵上手くいきます。

後は資料への落とし込みとなりますが、大企業は文化・文脈が大事です。資料づくりに細心の注意を払います。

今回のケースでいけば「営業部の〇〇様との複数回のミーティングを経て」や「御社調査のアンケート利用より、既に訴求済みの〜〜以外の××にニーズがあると確認ができました」のような記載、理由づけをし、その上で、このようなクリエイティブを作りましたので是非試してみたいです。
というプレゼンの仕方です。

これにより、顧客担当者様も安心して賛同ができます。

こうして、ヒット訴求が世に出ていきます。

ポイント:大手企業では文脈や型が重要になる


マーケットに合わない事業をゼロにする
マーケティングとセールスの壁を取り払う

日本初、顧客のPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を行う会社。
PMFコンサルティングで市場にマッチした新記事業を立ち上げる。


【事例2:タスク管理ツールJootoでの新規提案】

株式会社PR TIMES様が提供しているタスク管理ツール「Jooto」のプロジェクト。

こちらの売上を伸ばすための施策を考えていきました。

当時、Jootoではノーマルなスタンダードプランと、高機能なエンタープライズプランがあり、後者の販売が伸び悩んでいました。売り方の型がなかったのです。

本件について、私はシンプルなアイデアで、大きくエンタープライズプランの販売を伸ばしました。

【詳細記事はこちら】
なぜ企業内だけでは状況を一変させるアイデアが生まれないのか?

一言でいうと、扱いの決まっていなかったJootoの請求書払いについて「スタンダードプランでは不可」としたんです。

他にも打った施策はたくさんありますが、これだけでも大きなインパクトがありました。

「プロダクトやサービスの中身を一切変えずに済む」アイデア

これも顧客内で通しやすい企画の一つの条件です。
ステークホルダーが最小で済むからです。

顧客の限られた現アセットの中で、大きなゲームチェンジを発生させる。これがビズデブの醍醐味かなと思っています。

加えて、本件では本部長との関係性が良好だったため、こちらの企画を一気にトップダウンで落としていただくことができました。

これも企画を通しやすいテクニックとして加えさせてください。

ポイント:キーマンの力を借り、上から落とす


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アイデアを事業に落とし込むための方法論

新規事業アイデアを考える
  1. 文脈、歴史、既成事実、ロジックでアイデアの外堀を埋めていく
  2. キーマンの力を借りて、政治の力でアイデアを落としていく
  3. 顧客の現アセットの限りで実現できるアイデアを考える

通るアイデアを作る基本的なスタイルとしては、以上のパターンをよく用います。

この3つを効果的に、企業や場面によって使い分けまたは組み合わせると、アイデアは自然と通るようになるでしょう。

【事例3:中日アド企画での新規提案】

株式会社中日アド企画では、アプリのビジネスをどう伸ばすのかが課題となっていました。

社員の健康管理に関して、専門アドバイザーが動画を見られるアプリなのですが、プロダクト自体を魅力にして売り出すにはまだまだ時間がかかるものでした。

さて、ここでも王道の「モノ売りからコト売り」のパターンが効きます。

アプリのビジネスでも、価値の本質をアプリそのものに求める必要はありません。
ましてや成長段階のアプリならなおさらです。

ではここでいう「コト」とはなんでしょうか?

目をつけたのは、「健康経営優良法人のバッジの取得」でした。

企業としては、健康経営優良法人のバッジがとれれば、離職率の低下や採用強化などのベネフィットが多くあります。

このバッジを取得するためには、社内で従業員の健康への取り組みを可視化する必要があります。

アプリの価値は「取り組みの可視化」としました。

導入してほしい相手は、「社員」ではなく「企業」というわけです。

このマインドになることによるメリットは他にもあります。企業のアプリ導入のモチベーションが明確になることによって「社員への導入推進力」が活発になります。

要は先程挙げた、「上から落とす」が可能になるわけです。

アプリの運用率も上がり、チャーンレートも下がる一石二鳥のアイデアというわけです。

具体として、「健康経営有料法人を取得して、優良企業ブランドを獲得する」という売り方に至りました。アプリを売りましょう(モノ売り)ではなく、優良企業ブランドを得ましょう(コト売り)という方法に転換することで、「コンサルタントを付加価値として付けて、単価を一気に上げる」という戦略もとれるようになりました。

ちなみに、このバッヂは取得が中々に大変で、年単位の取り組みが必要になります。

つまり、1年はチャーンされにくい商品にアイデア一つで早変わりするのです。
これもモノからコトに動くことで、停滞した状況が一変した事例です。

このように売り方のアプローチをモノからコトに変えることで、単価が爆発的に上がる私の必勝パターンの一つです。

余談ですが、アプリを使うことが目的だと使用感ばかりに目が行ってしまいます。しかし、目的を使用実績の可視化に据えると使用感は関係なくなります。

「数値を取りたい=使い勝手はそんなに気にしない」ということです。

これは人間を知るということの重要性を意味しています。

人と組織の力学について、インセンティブやベネフィットも含めてしっかりと理解する。
これらを組み合わせれば、大抵のアイデアは生まれてきます。

重要なのは以下の2つを理解しておくことです。

  • アイデアはどう生まれるか
  • アイデアをどう通すか

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アイデアはどう生まれるのかまとめ

アイデアは様々な要素が集まって初めて生まれる

モノからコトへ変換する中でアイデアは生まれやすいと思っています。先ほども述べた通り、勝ちパターンの一つですね。

後は、今あるアセットを理解することだと思います。

今すぐ変えられるものと、変えられないものがあります。最初はその選分けから始まります。まずは限られたアセットの中で、動かせるものを理解することが重要です。

例えば、大企業のプロダクトで販売単価を変えましょうというのは非常に重たく、ほぼ動かせません。そうした限られたアセットの中で、何も変えずに見せ方や切り方で変えられるものはなんだろうと考えます。動かせるもの、動かせないものをよく理解して棚卸します。

限られた制約の中で、どう組み合わせればカチンとハマって向こう側が見えるか。ガチャガチャと知恵の輪をやるようなイメージです。複雑強固に見えても、正しくハマればカチッと行ける。モノからコトへ考えるとアイデアが出る。

ただし、アイデアはいいけど動かせないという場合もあります。そういう時は、じゃあ動かせるものだけで実現可能なアイデアはもっと無いかな?と顧客のアセットを棚卸して、更に考えを深めていきます。

そして最終的に、動かせるアセットでコト売りを開発する、それがPMFのアイデアなのかなと思います。

アイデアをどう通すか

思いついたアイデアを通すなら、社内政治からの鶴の一声、もしくはお客様企業の文脈や歴史を借りてアイデアにロジックを付与することが必要です。

こうしたことをしっかりやらないとアイデアはまず通りません。

定例会議などでアイデアを出しても、ロジックや文脈の補完が効いていない場合「なんか良さそうだけど賛同していいのかな?」みたいな雰囲気になります。そういう時に、安心して周りが賛同できるように土台を固めます。

例えば、考えたアイデアを補完するために、顧客の競合他社にアプローチしてインタビューしてアイデアの裏を取ることもあります。これは“競合の内情を調べたという事実”が大事なのです。

提案時にも「競合の〇〇社があると思いますが、個人的な伝手を辿って担当者にみっちりインタビューしてきました。このような資料がありまして、業界の構図含めしっかりインプットしました」とすると発言の納得感が変わります。

アイデアの段階で絶対にいけると思っていたとしても、競合はこうやっているという事実を敢えて取りに行き、アイデアの裏付けを取ることに意味があるのです。

人間は新しいアイデアに対して、賛同していいのかどうかで二の足を踏みます。

だからこそ、競合他社の実態や、自社アンケートから新規インサイトを発見、というような事実の裏付けがあると安心してガーっと進むのです。

人間の力学とはそういうものなんです。
政治を使うか、文脈などでアイデアを守ることがアイデアを通す上ではとても重要です。

これらを担保するマーケティングのフレームワークとして外せないのが、3CでありSWOTです。

3Cの視点

  • 自社のアセットを棚卸する=Company(自社)
  • ユーザーインタビュー見ました=Customer(顧客)
  • これって他社も言えるよね=Competitor(競合)

競合との差別化を図るなら、他社でも言えることを主張してはいけません。

先ほどの中日アド企画の事例でいえば、中日=東海の王様です。

健康経営優良法人の取得サポートコンサルをするだけなら他の企業でもできますが、中日新聞電子版で発信枠取るという価値提案は他者に真似ができません。

このように、他社が絶対に言えないものを用意すること。

これが競合(Competitor)をクリアする際の鉄則です。

質の良いアイデアを生むための順序

アイデアは条件が揃って初めて生まれる

とにかくまずは3Cを全て備えないとアイデアは生まれてきません。
3Cが揃い、そこからモノ→コトへの転換を試せば、まずアイデアが生まれます。

この順序を踏まなければいいアイデアは生まれません。

よくアイデアはひらめきで生まれるものと思われがちですが、半分正しく、半分間違っています。Company、Customer、Competitor、それぞれのバックグラウンドが頭に入っているからこそ、突如としてアイデアが閃くのです。

つまり、アイデアがふっと生まれる状況を作るためには、インプットが必要不可欠ということです。

3Cを考える上で、お客様を理解している、お客さまのニーズを知っている、という状態が大事なので私自身も営業によく出ています。ユーザーが商談中にポロッと出す発言がすごくヒントになるからです。

こうした生の声はアンケートと同じような価値がありますし、商談の場では状況に応じたヒアリングや質問もできます。そして商談を重ねる中でお客様をより深く理解することもできます。

SWOTの活用

3Cを全て頭に叩き込んだ状態かつ、SWOTの概念も活用することで、外部要因を考慮することができます。そうすることで、今後の時流まで想定したアイデアを想像することに繋がります。

ただし、ビジネスの現場では中長期的なリスクを考えたアイデアも重要ですが、今日明日すぐに使えるアイデアの方が求められる傾向にあると感じています。

ビズデブを通して得た戦略の幅を活用する

ビズデブ(Business Development)をやると、使える戦術の幅が広がります。

この事例はあそこで使えるなと。様々なインプットを保持しながら仕事をするため、ある時、思考がカチッと連結してスパークすることがあります。それこそ、お風呂に入っている時などに「そうだ!あの案件こうすればいいんだ」とアイデアが降ってくることがあります。

これはマルチタスクをしている人しかありつけないご褒美、贅沢な気付きだと思っています。
10以上のプロジェクトを並行して動かしていると、そのような気付きがよくあります。

1社で1事業をやっている社員よりも、10倍の経験ができる。それぞれの事業に本気で関わることで、他の人が必死に生み出した人生の結晶を同じように得られる。10の人生を追体験できる。これこそがビズデブの楽しさであり、やりがいです。

そして、そこで得た経験値の引き出しは多くのアイデアの源泉となります。

アイデアのストック=経験値×(3C+SWOT)×コト売りへの転換

この計算式があるからこそ、アイデアの枯渇もありませんし、ストックも無限に生まれます。

日々真剣に仕事に取り組んでいて、3CとSWOTを理解していれば、自然と弾き出されるのがアイデアです。結局のところ、アイデアはロジックなことが多いのではないでしょうか。

なぜなら、理詰めで状況を整理すると、自ずと答えが出てくるからです。だからこそ、まずは3CとSWOTを丁寧にやることです。その結果、自然と答えに辿り着きます。

良いアイデアを生み出し、通していくために

今あるアセットはこうだ。ユーザー、市場にこういうニーズがある。競合じゃ絶対にこれは言えないな。じゃあこれやるしかないじゃん!が新規事業も含むアイデアの組み立て方です。

新規アイデアと新規事業の本質は同じです。モノを売る本質はコト売りにあります。そこを意識して用意周到に組み立てることが、質の良いアイデアを生み出し、提案を通していくためには重要です。


マーケットに合わない事業をゼロにする
マーケティングとセールスの壁を取り払う

日本初、顧客のPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を行う会社。
PMFコンサルティングで市場にマッチした新記事業を立ち上げる。

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