PMFが注目される理由
PMFという言葉の意味を考える前に、日本のビジネスの動きについて考えておきましょう。
2022年、政府は日本経済の成長を取り戻すために必要不可欠な持続可能な経済成長を実現するべく、新しい資本主義に向けた重点投資分野の一つに「スタートアップへの投資」を掲げました。
岸田政権は2022年をスタートアップ創出元年と位置づけ、勢いのあるスタートアップの創出とその支援こそが、日本経済復興の鍵であると定めています。
この政府の動きと連動し、経団連は2022年3月、「スタートアップ躍進ビジョン」を発表し、以下のように言及している。
わが国の持続的成長の新たな牽引役として、グローバル級のスタートアップを継続的に創出することを目標とする。GAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)のように既存産業にとって代わりグローバル市場を席巻するスタートアップは、全体の中のほんの一部であることから、母数すなわち起業の数自体を格段に増やすとともに、成長のレベルも引き上げる必要がある。
具体的には、5年後(2027年)までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍にするとともに、最も成功するスタートアップのレベルも10倍に高める。目標を確実に達成するために、それぞれについて以下のKPIを設定し、実現状況をモニタリングする。
【参照:経団連:スタートアップ躍進ビジョン(2022-03-15)】
上記のように、日本ではスタートアップ振興の動きが活発化していますが、新規の事業は初期段階から積極的に投資を受けていくため、赤字から始まり、経営資源が尽きる前に、商品が市場で受け入れられている状態を達成していくこと求められます。
その“商品が市場で受け入れられている状態”の達成指標こそがPMF(Product Market Fit)=プロダクトマーケットフィットです。
つまり、事業が成功するか否かはPMFを達成できているかどうかが鍵になるのです。
マーケットに合わない事業をゼロにする
マーケティングとセールスの壁を取り払う
日本初、顧客のPMF(プロダクトマーケットフィット)を行う会社。
PMFコンサルティングで市場にマッチした新記事業を立ち上げる。
そもそもPMFとは何か?
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは「Product Market Fit」の頭文字を取った言葉です。
- Product:製品(サービス)が
- Market:特定の市場に
- Fit:適合している状態
もう少し表現をビジネスに寄せると、「カスタマー(顧客)のニーズを満たす製品(サービス)を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態」を意味します。
PMFの概念はアメリカのソフトウェア開発者であり投資家のマーク・アンドリーセン氏によって提唱され、現在ではスタートアップの成否を左右する要素として世界中の起業家に認知されています。
スタートアップを成功させる上で「カスタマー(顧客)のニーズを満たす製品」と「適切な市場を選択し、受け入れられていること」の両方が揃っていることが、PMFの達成には必要不可欠な条件です。
いずれかの要素が欠けるだけで、PMFの達成が困難になり、事業が成功しにくい状況に陥ると考えて良いでしょう。
理由は簡単です。
PMFの要素が欠けた状態で製品の販売規模を拡大すると、製品を購入するカスタマーを得られず、やがて人材や資金のリソースが尽きてしまい事業を撤退(倒産)することになるからです。
だからこそ、PMF : Product Market Fitを目指すことが事業の成功に直結すると言われているのです。
PMF達成までの4ステップ
それでは具体的に、どうすればPMFを達成することができるのか。
その達成方法について4つのステップに分けて解説していきたいと思います。
その前提としてPSF(プロブレムソリューションフィット)=Problem Solution Fitを達成しているということが挙げられますが、この説明については別の記事で詳細を説明しています。
なので今回はPSFを達成している、という前提からスタートしていきます。
PSFに関する記載はこちらの記事を参照してみてください。
【参考記事】
PSF(プロブレムソリューションフィット)とは?PMFとの関係性を説明します
MVP(Minimum Viable Product)を構築する
PSF(プロブレムソリューションフィット)に至るまでに得た知見をもとに、Minimum Viable Product(MVP:実用最小限の製品)を構築します。
これは単に機能が少ないという意味ではなく、目的達成に必要な最小限の機能を意味しています。
つまり、新たな製品として顧客が満足する、もしくは競合とは異なる新たな価値を持った製品であることが前提です。
MVPを想定顧客に使用してもらう
構築したMVPを想定顧客に使用してもらい、実際の市場やニーズとのフィット感を確かめます。
市場に投入することで新たなフィードバックを獲得し、次の検証材料としていきます。
この時のフィードバックはアンケートでも良いですし、ユーザーと関係構築ができている間柄であれば直接インタビューをする方法も非常に効果的です。
アンケートやインタビューによる定性分析
実際に新製品を使用してもらい、そこから何を感じたか分析していく手法です。
使用していく上での顧客目線でのメリット・デメリットがわかるように質問を組み立てます。
ポジティブなフィードバックは嬉しく、ネガティブなフィードバックは悲しくなるかもしれません。
しかし、ここで重要なのは改善点を洗い出してくれるネガティブフィードバックです。
嬉しい方ばかりを見ず、真摯に受け止めて改善に活かしていきましょう。
<質問例>
- この製品(サービス)に価値を感じましたか?
- 特に価値を感じた機能はなんですか?
- どのような点に価値を感じましたか?
- 不要もしくは不満と感じた機能はありましたか?
- 不要もしくは不満と感じたのはなぜですか?
- この製品(サービス)を他者に薦めたいと思いますか?
- どうすればこの製品(サービス)を買いたいと思いますか?
質問内容は開発のフェーズや改善状況を見ながら調整していきましょう。
顧客目線から得られる貴重な改善フィードバックを活かすことでよりマーケットにフィットしたプロダクトへと進化させることが可能になります。
MVPのフィードバックを検証する
顧客から集まったフィードバックをもとに、機能の過不足を解消しつつプロダクトの完成形を目指していきます。
- 実際に使用したことで、想定と異なる部分があったか?
- もしあったなら、それはどのような違和感だったか?
など「良かった点」「悪かった点」を具体的に洗い出していきましょう。
検証結果をもとに改善、反映する
検証フィードバックから出たネガティブな要素を解消することは勿論ですが、機能の充実を図ることもまた重要です。
機能を刷新していく中で、こうすればもっと顧客ニーズを満たし、満足度を高めることができると判断された機能は積極的に反映していきます。
実際に製品を稼働させて初めて気が付くことも多いため、ここで得られた検証結果を効果的に活用していきましょう。
この繰り返しの中で、プロダクトが洗練され、ユーザーのニーズを満たし、市場に受け入れられ、PMFを達成できるのです。
AARRR指標による定量分析
AARRRでは試作モデルや後述するMVPの提供により生じた「ユーザー獲得」から「収益発生」までをフェーズ毎に追うことができる指標です。
- Acquisition(獲得):ユーザーの獲得
- Activation(活性化):サービスの利用開始
- Retention(継続):サービスの利用継続
- Referral(紹介):他ユーザーへの紹介
- Revenue(収益):収益化
各段階での継続率や離脱率を分析することで、解決すべき課題を浮き彫りにします。
ただし、製品やサービスは売って終わりではありません。
1年、2年と継続利用していただけるよう、利用満足度を高めるサポートの提供が必要です。
PMFを達成するために、以下の3つの重要な要素を循環させていきましょう。
- マーケティングで見込み客を集める
- セールスで獲得する
- カスタマーサポートで逃さない
この3つのポイントの循環がPMFを目指す事業運営を目指す上での要となります。
マーケットに合わない事業をゼロにする
マーケティングとセールスの壁を取り払う
日本初、顧客のPMF(プロダクトマーケットフィット)を行う会社。
PMFコンサルティングで市場にマッチした新記事業を立ち上げる。
PMFの検証方法
次のフェーズとして、事業がPMFを達成できているか、きちんと検証しましょう。
PMFの検証方法として有効な手法を以下に3つまとめました。
Product / Market Fit Survey
Product Market Fit Surveyとは、PMFを定量的に把握するための調査方法です。
起業家のショーン・エリス氏によって考案されたものであり、その調査方法は非常にシンプルです。
ユーザーに対して以下の質問をします。
<質問>
Q:そのプロダクトが使えなくなったらどう思いますか?
<回答選択肢>
1、非常に残念
2、やや残念
3、残念ではない
4、該当しない(製品を使用していない)
この4つの選択肢のうち40%以上が 「非常に残念」と回答を得られた場合、そのプロダクトは今後も継続して顧客を掴むことができると判断され、PMFを達成していると考えられます。
NPS(Net Promoter Score)
NPSはNet Promoter Score(ネットプロモータースコア)の頭文字を取った言葉であり、カスタマーのロイヤリティを計測するための指標です。
ビジネス戦略かのフレッド・ライクヘルド氏によって提唱されました。
NPSの計測にはカスタマーに対して以下の質問を投げかけます。
<質問>
Q:その企業および製品を友人や同僚に薦める可能性はどの程度ありますか?
<回答方法>
0~10の11段階で回答
その回答をもとに以下の評価を行います。
- 0~6:批判者 商品に不満があり、悪評を広める恐れがある
- 7~8:中立者 商品に満足しているが、他社製品でも問題ない
- 9~10:推奨者 ロイヤリティが高く、自ら購入と他者への推奨を行う
<NPSスコアの計算式>
推奨者の割合 ― 批判者の割合=NPSスコア(-100%〜100%)
NPSは業績との相関性もあるロイヤリティ測定指標です。類似する指標に「顧客満足度(Customer Satisfaction)」がありますが、顧客満足度よりも、NPSの方が「業績との相関性」が高いと言われています。
リテンションカーブ
リテンションとはマーケティング分野において「維持」や「継続」を意味します。
そして、リテンションカーブはリテンション率を縦軸、プロダクトのリリースからの期間を横軸に設定したグラフを指します。
契約された製品やサービスが継続利用されるとリテンションカーブは横ばいとなりますが、契約解除された場合は下降していきます。
リテンションカーブが横ばいになる=継続利用の価値を認めてもらえている
PMFを達成しているプロダクトはカーブが横ばいになり、一方でユーザー数を失ったプロダクトのリテンションカーブは下降を続け、最終的にゼロになっていきます。
PMFはあらゆる事業に応用できる
今回は主にスタートアップの文脈でPMFの重要性や意味を解説してきましたが、PMF新規や既存の事業を問わず、あらゆる事業に応用が可能です。
仮に今売れていないプロダクトがあったとしても、その原因を分析することで活路を見出す策を打ち出せる可能性があります。
PMFコンサルティングで状況を一変させる
PMFを達成するにあたり、MVPを作りながら試行錯誤を繰り返して・・・とやりたいものの、実際はそんなプロトタイプをいくつも製作していくリソースはないというパターンは往々にしてあると考えています。
資金、人材、プロダクト、様々な制限がある中で、“何を変えることができるのか?”を冷静に分析し、どこの市場にそれが最適なのかをお客様と一緒に考えていきます。
そして組織一丸となってプロダクトのPMFを達成しましょう。
マーケットに合わない事業をゼロにする
マーケティングとセールスの壁を取り払う
日本初、顧客のPMF(プロダクトマーケットフィット)を行う会社。
PMFコンサルティングで市場にマッチした新記事業を立ち上げる。